東京都葛飾区柴又で1996年9月、上智大4年の小林順子さん(当時21歳)が自宅で殺害され、放火された事件から丸10年となった9日、順子さんの両親や警視庁亀有署特捜本部の捜査員、地元の防犯ボランティアら約40人が、事件現場の自宅跡地で献花式を行い、順子さんの遺影を前に、改めて解決を誓った。
順子さんは、米国留学を2日後に控えた96年9月9日夕、全焼した自宅から、首を刺されて死亡した状態で見つかった。同庁は延べ5万人の捜査員を投入、遺族らも犯人につながる有力な情報には、懸賞金500万円の提供を申し出ているが、時効まであと5年となった今も、犯人像の特定に至っていない。
献花式は、更地となった自宅跡地で毎年行われており、父親の賢二さん(60)は、「10年の月日は長いが、犯人逮捕を待ち望む私たちにとって、半年ぐらいにしか感じられない。解決につながる情報が必ずどこかに埋もれているはずなので、改めて情報提供をお願いします」と呼びかけた。(2006年9月9日読売新聞)
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この事件が未解決だろうことは、記憶にあった。それで、10年と紙面に載ると、やはり未だだっんだ、と痛む。
当時、素人推理であれこれ巡らせた。留学で別れがつらい同窓の若い学生か、地元土地勘ある男か。しかし、通うのが有名ミッションスクールなら、まずそれは少ない。すると、残るは下町の職人労働者。柴又は、映画の寅さんのイメージが強く定着していたから、そこでのこの残虐な白昼の惨劇は、地元商店街の興亡にも係わる一大事として、周辺も巻き込んだ大がかりな捜査が為されたものとおもう。こういう事件は初期の情報が有力な手懸りとなるんだろう。両側の家屋とも数十センチの隙間も無く並ぶ住宅密集地が、逆に盲点になったようだ。
その時、両親は外出していた。空き巣に入った泥棒が、まさかの被害者と鉢合わせ、縛り上げ、室内物色。目撃者としての彼女を、首を刺して致命傷。その惨たらしい現場を隠滅する他指紋足跡等消す為放火、窓から外の人の気配をうかがい逃走。
もうひとつは、彼女を狙った。その家の家族の日常を調べ上げて、両親がいつもどおり外出。未だ出て来ない被害者ひとりだけを確信して入る。刃物で脅して縛り上げる。しかし抵抗されて、時間経過を恐れて、目撃されているので刺す。そして証拠隠滅は同じ、放火して逃げる。
しかし、よそ者の通り魔的犯行にしては、余りに偶然の空白が犯人側に作用してる。遠くからその家の前の路を通行人を装い歩いて来て、気付かれぬよう左右物色、往来に人無い時、人の気配ないその家に闇雲に跳び込むだろうか。居たら刃物で縛り上げ、という筋書きぐらい頭にあったとしても。
となると、同じ町内会ではないが土地勘があって、逃走経路も最も見つかりにくいそれを計算づくで、普段仕事場に通う自転車かバイクでその家の様子までつかんでいた、職人労働者。犯行当日のみ、徒歩で近づいた。
殺人事件、それはもう正義の問題だ、とおもう。あの坂本弁護士一家ではないが、それこそプロ集団に任せておけばいいものなんだろう。警察、検察。彼らが多数を動員して、長年執念深く追跡しても、未解決。だから、正義を大上段に構えずともよい、市井の市民にまで、せめて公正の位置からでも応援を、と遺族も地元住民も依頼する訳だろう。
ネットという公共かつ広範囲に知らしめる利器は、大いに利用して然るべきものである。犯人逮捕に使えるならば、そうしよう。