厚生労働省は、アスベスト(石綿)被害を受けた不安のある人を対象とした無料検診を研究事業として実施することを決めた。
できるだけ多くの都道府県で検診体制を整えた上で、年内に開始する予定。また、中皮腫(ちゅうひしゅ)と診断された患者のデータを収集し、全国的な中皮腫患者の登録制度を構築し、診断、治療方法の研究に役立てることにしている。
厚労省の研究班(主任研究者・土屋了介国立がんセンター中央病院長)が実施するもので、今年度の研究費は約1億円。
石綿を扱っていた企業に勤務する人や退職者で石綿の影響がみられる人については、現在、企業や国による検診が行われている。また、工場周辺住民の健康被害が報告された兵庫県尼崎市、大阪府泉南地域、佐賀県鳥栖市の3地域に住む人については、環境省が今年度から、工場の稼働時期に居住していたことなどを条件に、無料で検診を受けられる「健康リスク調査」を行うことにしている。
しかし、これ以外の地域に住む一般の人については、たとえ石綿被害を受けた不安があっても、公的な検診制度の対象とされておらず、早期発見の網から漏れる形になっていた。石綿に関する相談窓口が置かれている、各地の労災病院には、「石綿を扱っていた工場が近くにあった。検診を受けさせてほしい」などの声も寄せられていた。だが、症状がない状態で検査をした場合には、2万円余りの費用を全額自己負担してもらわなければならなかった。
研究事業は、全国の労災病院や保健所などに、石綿被害について相談をした人で、検診を希望する人が対象。石綿に接した可能性を確かめる問診(無料)をした上で、胸部エックス線検査、CT検査を実施する。検診は、中皮腫の診断能力がある病院などに依頼し、できるだけ多くの都道府県で受けられるようにする方針。胸膜肥厚など、中皮腫の兆候が見られた場合は、専門医療機関に紹介し、経過を診てもらう。
また、この検診も含め、新たに中皮腫と診断された人については、全国の医療機関の協力を得て、年齢、居住地、職歴など患者のデータを収集、登録する。データベース化が進むことで、発症者が多い地域があるかなどの実態把握が容易になるほか、治療効果の分析などに役立てることができるという。(2006年9月13日読売新聞)
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健康は労働意欲と結び付きます。【06.6.6】で取り上げたからではありませんが、潜伏というか、発症まで長期間本人が気付かないのが恐ろしいです。