かいふう

近未来への展望や、如何に。

初めての判断基準を最高裁が示す.その1

kaihuuinternet2006-10-04

米国の健康食品会社が米国政府に損害賠償を求めた訴訟の嘱託尋問に関連し、NHK記者が取材源に関する証言を拒絶したことの当否が問われた裁判で、最高裁第3小法廷(上田豊三裁判長)は3日、記者の証言拒絶を正当と認めた東京高裁決定を支持し、食品会社側の特別抗告などを棄却する決定をした。

決定で上田裁判長は、「取材方法が一般の刑罰法令に触れるなどの事情がない限り、原則として取材源に関する証言は拒絶できる」とする初判断を示した。

決定は、同小法廷の上田、藤田宙靖堀籠幸男那須弘平の4裁判官による全員一致の意見。国民の知る権利を守るために報道が果たす役割を高く評価した内容で、取材源秘匿を理由に証言拒絶が認められる判断基準を最高裁として初めて示した。

決定はまず、記者の取材源について、「みだりに開示されると、記者と取材源との信頼関係が損なわれ、自由な取材活動ができなくなる」とし、取材源の秘密は「職業の秘密」に当たると判断。その上で、民事裁判で取材源の秘密が保護に値するかどうかは、「報道の内容や社会的意義、取材の態様、取材が妨げられることによって生じる不利益の程度」と、「訴訟の持つ内容や社会的な意義、証言の必要性や代替証拠の有無」を比較して決めるべきだとする判断基準を示した。

また、決定は、「報道機関の報道は、国民の知る権利に奉仕するもので、報道のための『取材の自由』も憲法の精神に照らして十分尊重に値する」とし、取材の自由を確保するために取材源秘匿は重要な社会的価値を持つとも指摘。〈1〉取材方法が刑罰に触れる〈2〉取材源が開示を承諾している〈3〉社会的意義のある重大な民事裁判で証言を得ることが必要不可欠である――などの特別な事情がないという条件を付けた上で、「原則として取材源に関する証言は拒絶できる」と結論づけた。

この問題は、健康食品会社に対する課税処分報道について、同社が米国のアリゾナ連邦地裁で起こした訴訟がきっかけになった。同地裁は、この報道を日本で行った報道機関の記者などに対する嘱託尋問を日本の裁判所に要請したが、NHKや読売新聞、共同通信記者らが証言を拒絶したため、食品会社側が証言拒絶の当否を問う裁判を申し立てた。

一連の裁判では、地裁、高裁レベルで計6件の決定が出されている。読売新聞記者のケースでは、1審・東京地裁が「国家公務員法上の守秘義務に違反したと疑われる公務員についての証言拒絶は認められない」として、ほとんどの証言拒絶を認めなかったが、2審・東京高裁は証言拒絶を認めるなど、下級審で判断が分かれていた。

NHK広報局の話「今年3月の東京高裁の決定に続いて、最高裁が取材源の秘匿を認めたことは、国民の知る権利に応えるために欠くことのできない報道機関の取材・報道の自由を真正面から認めたもので、高く評価したい」(2006年10月4日読売新聞)
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[取材源秘匿]「証言拒否に理解示した最高裁

記者が「取材源を明かせ」と法廷で証言を求められたとき、どこまで拒絶できるのか。「取材源秘匿」というジャーナリズムの鉄則に、最高裁の初めての判断が示された。

「取材源の秘密は、取材の自由を確保するために必要なものとして、重要な社会的価値を持つ」と、最高裁は言う。

むやみに取材源が明らかにされると、記者と取材源の間の信頼関係は損なわれ、以後の取材活動に重大な支障が出る。記者側のそうした主張に、最高裁は深い理解を示した。

取材の手段、方法が違法であるとか、取材源に関する証言がないと重要な裁判の公正さが失われるとか、特別の事情がない限り、記者は原則的に、取材源にかかわる証言を拒否できる。最高裁はそう結論を導いて、NHK記者の証言拒否を「正当」と認めた。

米国の企業が、米政府に損害賠償を求めた訴訟に関し、米裁判所が日本の報道機関の記者の嘱託尋問を日本の裁判所に求めたのが、この裁判のきっかけだ。

これまでに、NHKと読売新聞の記者の証言拒否をそれぞれ「正当」と認める東京高裁の決定が2件、出ている。

NHK記者のケースでは、1審も証言拒否を認めた。だが、読売記者の1審は報道の自由を限定的にとらえ、「公務員の守秘義務に反して得られた可能性がある場合、拒絶は認められない」と述べて記者に取材源を明かすよう命じた。

司法が報道の意義、国民の知る権利を否定するに等しい決定だと、メディア全体が危機感を抱いた。

最高裁決定は、おおむね東京高裁の決定内容を追認した格好だ。

そのなかでも、取材源の秘密が、記者に証言拒否が許される「職業の秘密」に当たる、と明確に述べた点は、注目に値する。民事訴訟では初めての最高裁判断で、大きな意義がある。

ただ、最高裁は、記者の取材源秘匿もすべて、ただちに認められるわけではなく、保護に値する秘密かどうかを判断する必要がある、と述べている。

報道と民事裁判それぞれの内容、社会的意義・価値などが「比較衡量」の要素となる。報道機関が取材できなくなることで被る不利益の内容、裁判ではどの程度証言を必要としているのか、証言がない場合、それに代わる証拠はあるのか、なども検討されるべきだ、という。

記者の証言拒絶の範囲に一定の制約を設けた、と見ることもできる。メディア側も、十分、心すべきだろう。

読売記者についても、近く同様の最高裁決定が出ることは確実だ。(2006年10月4日読売新聞・社説)