7日午後1時25分ごろ、北海道佐呂間町の若佐地区で竜巻とみられる突風が発生し、近くの国道333号の「新佐呂間トンネル」の工事を請け負っていた大手ゼネコン「鹿島」などのJV(共同企業体)の鉄骨プレハブ製工事事務所や民家などが倒壊した。
北海道警によると、倒壊した建物の下敷きになるなどして工事事務所内にいた鹿島の工事事務所副所長、橋本義信さん(52)ら9人が死亡。女性1人が重体、22人が重軽傷を負い、北見市内の病院などに収容された。
道危機対策局によると、この突風で同地区を中心に建物33棟が全壊、29棟が半壊や一部損壊した。同地区は、北見市に通じるルクシ峠のふもとにあり、役場のある町中心部から約8キロ離れた住宅地。
札幌管区気象台は同日記者会見し、発達した積乱雲が同町付近を通過しており、これが突風の原因との見方を示した。竜巻かダウンバースト(急激な下降気流)かは特定していないが、専門家は「テレビニュースの映像を見る限り、竜巻で間違いない」と指摘している。8日午前7時から現地調査を行う。
鹿島によると、工事事務所付近では、プレハブの工事事務所兼宿舎と作業員宿舎各1棟が全壊した。9人はいずれも壊れたプレハブの下で発見されたという。突風の発生当時、事務所では建設会社社員や下請け会社の作業員などが打ち合わせ中だったとみられる。
北海道電力北見支店によると、突風で電柱が倒れるなどして、町内と北見市の一部で630戸が停電。現場周辺の作業員や高齢者ら56人が近くの武道館に自主避難した。
目撃者の話などによると、竜巻とみられる突風は南西方向から北東方向に通過したとみられる。幅数十メートルで被害が集中していた。
被害発生を受けて地元の佐呂間町は7日午後5時半、自衛隊の災害派遣を要請し、陸上自衛隊第25普通科連隊(遠軽駐屯地)から毛布400枚が同町に搬入された。
上湧別町の主婦(35)は、車で北見市に向かう途中、突風と遭遇した。この主婦は「峠の方に木枯らしのような細い風の柱が見えたと思ったら、どんどん色がどす黒くなり、峠から市街地に下りてきた。車は揺れ、電線がバチバチと音を立て、建物の一部や机がものすごい勢いで交差点内を飛んで行った」と話していた。
新野宏・東大海洋研究所教授(気象学)によると、これまで戦後の竜巻被害で最多の犠牲者が出たのは、1957年11月に長崎県内で6人が死亡したケース。今回の9人はこれを上回る数字となった。(2006年11月7日読売新聞)
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発達した積乱雲、というと、真夏の入道雲のイメージ。
それが、立冬に、鉄骨プレハブ製工事事務所を倒壊させる威力の凄まじさの竜巻になって、突如襲ってくる。
犠牲者が、それの対策も熟知の建設工事会社関係者だから、ショックも隠し切れない。
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北海道は8日、竜巻で大きな被害が出た佐呂間町に災害救助法を適用することを決めた。
国と道は、同町が実施する避難所設置、被災者への炊き出しなど生活必需品の費用を全額補助する。北海道が同法を適用するのは、平取町などが台風被害を受けた2003年8月以来、約3年ぶり。
一方、道対策本部(本部長・高橋はるみ知事)は8日、世帯年収や対象経費に応じて最高300万円まで支給される被災者生活再建支援金支給事業の適用や、死傷者を対象にした災害弔慰金、住家被害見舞金の支給など、道独自の支援策の検討を始めた。
民家など建物62棟が損壊した住宅対策では、近隣地域に道営住宅15戸を確保し、被災者を優先的に入居させる。また、被災者の心のケアのため、現地に9日、専門医らを派遣する。(2006年11月8日読売新聞)