安倍首相は19日、首相官邸に自民党の中川幹事長を呼び、大手銀行が再開の動きを見せる政治献金の受け取りは党として自粛するよう指示した。
公的資金の投入などで最近は業績が好転したにもかかわらず、過去の赤字を理由に法人税を納めていない大手行への批判が高まっており、多額の献金を受ければ国民の強い反発を招くと判断した。
安倍首相は中川氏に、「大手銀行の政治献金再開が報道されているが、過去の経緯にかんがみて遠慮すべきで、そのように扱ってほしい」と求め、中川氏も「(経理)担当者に伝えます」と了承した。
安倍首相はその後の記者会見で、「今の段階で主要銀行から自民党が献金を受け取ることは、国民の理解を得られないと判断した。政治資金をお願いすることを遠慮させていただく」と言明した。
自民党は1998年10月、金融システム安定化に向けて公的資金を受けた銀行からの献金受け取りを自粛することを決定した。以後、日本経団連に加盟する約80行すべてが政治献金を取りやめている。
しかし、三菱東京UFJ、みずほ、三井住友の大手3行が今夏以降、相次いで公的資金を完済したため、献金再開の環境が整ったとして、日本経団連が全国銀行協会を通じて金融界に献金再開を要請していた。これを受け、三菱東京UFJ銀行は12月末の取締役会で、献金再開を正式決定する見込みとなっていた。みずほ銀行も年内再開を検討しており、三井住友銀行は07年中に再開する方向だった。
みずほ、旧東京三菱、旧UFJ、三井住友、りそなの大手5行からの自民党への融資残高は、2005年末で計80億円に上っている。自民党にとって今回の措置は、「受けた献金で融資を返済する、事実上の『負債免除』だ」という批判をかわす狙いもあると見られる。(2006年12月19日読売新聞)