アスベスト(石綿)建材などを1975年まで製造していた横浜市鶴見区の「エーアンドエーマテリアル」旧横浜工場近くの住民2人が、アスベストが原因とされる中皮腫(ちゅうひしゅ)で死亡していたことが、17日わかった。
2人ともアスベストを扱った職歴はなかった。同工場の周辺住民で、中皮腫による死亡が確認されたのは初めて。横浜市は「今後、環境省に詳しい調査を依頼したい」としている。
死亡したのは、主婦原田サワ子さん(当時72歳)と元市職員高橋忠誠さん(当時61歳)。社団法人「神奈川労災職業病センター」などによると、原田さんは戦後、工場から約100メートル離れた家で暮らし、89年、発症から半年後に中皮腫で死亡した。高橋さんは60年から73年まで工場から約500メートルの鶴見区役所に通勤し、区役所近くの寮に住み、2003年に亡くなった。
遺族は、労災が適用されない被害者を救済する「アスベスト新法」に基づいて特別遺族弔慰金の支給を申請。原田さんが今年1月、高橋さんが昨年12月、それぞれ被害を認定された。
アスベストによる健康被害問題は05年夏、大手機械メーカー「クボタ」旧神崎工場(兵庫県尼崎市)の周辺住民らの死亡例などから表面化した。
エー社も元従業員が中皮腫で死亡していたことがわかり、遺族らに弔慰金などを支払った。エー社の旧横浜工場から半径100メートル内の住民56人が健康診断を受け、28人の肺からアスベスト吸引が原因とみられる病変「胸膜肥厚斑(ひこうはん)」が見つかった。中皮腫による死者は明らかになっていなかった。
エー社は「周辺住民の死亡例はまだ把握しておらず、これから確認したい」と話している。
原田さんの長男義一さん(65)は「当時から、医師がアスベスト工場との関連を指摘していた」と話している。
同センターの西田隆重事務局長は「鶴見区には、ほかにもアスベスト関連工場はあったが、住民の健康診断の結果などを見ると、2人の死亡はかなりの確率で旧工場との因果関係が疑われる」と話している。
「クボタ」は旧神崎工場の周辺住民ら99人に救済金を支給。建材メーカー「ニチアス」の2工場(奈良県王寺町、岐阜県羽島市)では、周辺住民3人が中皮腫で死亡し、遺族に救済金を払っている。(2007年2月18日読売新聞)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
関西電力(大阪市)が、アスベスト(石綿)による中皮腫(ちゅうひしゅ)で死亡し、アスベスト救済新法で労災時効の救済措置を受けた元社員の遺族に、6000万円弱の特別弔慰金を支給していたことがわかった。
企業によるアスベスト被害への補償としては国内最高レベルとみられる。同社は従来、労災認定を受けた死亡社員の遺族に特別弔慰金を支給。新法では、労災申請の時効(死後5年)を過ぎた人でも、新法による認定で遺族年金などが支給されるようになったため、該当する元社員4人も特別弔慰金制度の対象とした。
関係者によると、4人のうち50歳代の1人は火力発電所の補修に携わり、1993年に中皮腫で死亡した。同社は「具体的な発生場所や発症時期などは、個人情報なので言えない」としている。
アスベスト被害をめぐる企業の補償では、大手機械メーカー「クボタ」(大阪市)が元従業員ら144人に、3200万〜2500万円を支給している。(2007年2月19日読売新聞)