オウム真理教の松本智津夫死刑囚(52)の控訴審を担当した弁護士2人について、東京高裁は7日、「迅速な審理を妨げ、被告の利益を著しく損なった」として、2人が所属する弁護士会に懲戒請求した。
裁判所による懲戒請求は1970年以来、37年ぶり。
懲戒請求されたのは、控訴審で主任弁護人を務めた松下明夫弁護士(仙台弁護士会)と、松井武弁護士(第2東京弁護士会)。
両弁護士は、松本死刑囚の控訴審で、控訴趣意書の提出期限最終日に持参した控訴趣意書を提出しなかった。この結果、同高裁は昨年3月に控訴棄却を決定。最高裁もこれを支持したことから、同年9月に松本死刑囚の刑が確定した。
高裁は同月、刑事訴訟規則に基づき、日本弁護士連合会(日弁連)に両弁護士の処分を求める「処置請求」を行ったが、日弁連は先月、両弁護士の弁護活動について調査をしないまま、処分しないと決定した。このため、高裁は、所属弁護士会が事案の調査を行わなければならないことを定めた弁護士法に基づく懲戒請求に踏み切った。
懲戒請求書の中で、同高裁は両弁護士の弁護活動について、「趣意書の提出を自らの主張を承諾させるための条件とし、その提出を拒否するという行為は刑事弁護人として考えられない無謀な行為。自らの主張に固執する余り、被告の法的利益を代償として提供したに等しい」と厳しく批判。さらに、「処分しない」と決定した日弁連についても、「弁護士の法廷倫理の確立に向けての弁護士会の消極的姿勢が顕著」とし、「裁判員制度の導入を目前にして、両弁護士の行為が違法であることを明確にするのは国民に対する弁護士会の責務だ」と、注文を付けた。
請求を受けた両弁護士会は、事実関係を調査し、懲戒相当と判断すれば、退会命令や業務停止などの処分を行う。
松下弁護士は「請求書を読んでいないのでコメントできない」と話した。(読売)