航空自衛隊小松基地(石川県小松市)の周辺住民1576人が国を相手取り、自衛隊機と米軍機の早朝・夜間の飛行差し止めと、騒音被害に対する損害賠償などを求めた「第3、4次小松基地騒音訴訟」の控訴審判決が16日、名古屋高裁金沢支部であった。
長門栄吉裁判長は、1審・金沢地裁判決に続き、航空機の騒音量を示す国際基準「WECPNL値(W値、うるささ指数)」で75以上の地域に住む住民1559人に結審までの精神的被害を認めて総額11億8800万円余を支払うよう国に命じた。自衛隊機と米軍機の飛行差し止めと、騒音による健康被害は認めなかった。
基地騒音訴訟を巡っては、2005年11月の「新横田基地公害訴訟」と、06年7月の「第3次厚木基地騒音訴訟」(確定)の2控訴審で、東京高裁も賠償範囲を「W値75以上」と認定しており、被害救済の範囲は定着しつつある。
「新横田」控訴審判決では、結審後も騒音被害は変化しないとして結審日から判決言い渡しまでの損害賠償を認め、これまで認められることのなかった「将来分の損害賠償」に道を開く初判断を示した。しかし、長門裁判長は「原告の居住状況などに変動の余地がある」と退けた。
金沢地裁が適法とした自衛隊機に対する住民の飛行差し止め請求権についても、長門裁判長は「公権力の行使への請求は、民事上の訴えとして不適法」とした1993年の最高裁判決に沿い、覆した。
第3、4次の小松基地騒音訴訟は、騒音被害に悩む周辺住民が1995と96年に提訴。金沢地裁は併合審理とし、02年3月に過去の被害を認め、W値75以上の区域に住む住民1729人を対象に、約8億1380万円の賠償を命じた。(読売)