自動車の排ガスで健康被害を受けたとして、東京都内のぜんそく患者らが国や都、自動車メーカーなどに損害賠償を求めている東京大気汚染訴訟で、被告のメーカー7社が、原告に対して計4億〜5億円の「解決金」を支払う方針を決め、東京高裁に伝えたことが4日、関係者の話で分かった。
一方、原告側は同日、記者会見し、メーカー側が提示した解決金の額について低過ぎるとして反発、「この金額では和解は出来ない」と不満を表明した。
これまで消極的な姿勢を示してきた解決金の支払いについてメーカー7社が実質的に合意したことは前進だが、原告側は計数十億円の解決金を求めており、今後、解決金の額を巡り厳しい交渉が行われるとみられる。
メーカー7社は、トヨタ自動車、日産自動車、マツダ、いすゞ自動車、日野自動車、日産ディーゼル工業、三菱自動車。
この訴訟は昨年9月に東京高裁で結審した後、和解協議が続けられてきた。東京都が昨年11月、国と都が各3分の1、メーカーと旧首都高速道路公団が各6分の1を負担し、5年間で約200億円の医療費を助成するという救済案を提案。メーカー7社は約33億円の負担については既に合意し、国も先月、約60億円を都に補助することを正式表明したことで、医療費助成制度の実現のメドがついた。
この結果、メーカー側が解決金の支払いに応じるかどうかが和解成立のカギとなっていた。メーカーの一部は、1審判決で賠償責任が認められていないことなどを理由に解決金の支払いに消極的だったが、国の方針転換などを背景に解決金の支払いに合意したとみられる。
過去の大気汚染訴訟では、工場などを運営する企業が原告1人当たり500万〜800万円の解決金を支払っている。原告側は「過去の訴訟なみの解決金」を要求しており、630人を超える原告への解決金として30億円以上を求めているとみられる。(読売)