東京都世田谷区の交差点で今年1月、タレントの風見しんご(本名・大下義博)さん(44)の長女、大下えみるさん(当時10歳)がトラックにはねられて死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われた埼玉県所沢市の会社員、加藤雅哉被告(23)の判決が6日、東京地裁であった。
村上博信裁判官は「横断歩道上で安全を確認するという運転者の基本的な注意義務を怠った。被告の刑事責任は重い」と述べ、禁固2年(求刑・禁固3年)の実刑判決を言い渡した。加藤被告の弁護側は控訴した。
村上裁判官は判決で、加藤被告に、「心の底から反省していることは分かっている」と述べた上で、「まだ小さな子が亡くなった。これから何年の人生があったと思いますか。命を絶ってしまった責任は重い」と、実刑を選択した理由を説明した。
判決によると、加藤被告は今年1月、世田谷区の交差点をトラックで右折する際、青信号の横断歩道を渡っていた登校中のえみるさんをはね、死亡させた。(読売)
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青信号の横断歩道を渡っていた被害者児童側になんら落ち度が見当たらないならば、裁判官が実刑を選択した理由もうなづけます。
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重大な事故を起こして、「うっかりしていた」では済まされない。相応の刑事責任を負うのは当然だろう。
自動車運転過失致死傷罪を新たに設ける改正刑法が成立、今月12日に施行される。
厳罰化やシートベルト着用の効果などもあって、交通事故の死者は年間6000人台まで減ってきた。だが、歩行者と自転車の死者が全体の45%を占める。
こうした交通弱者の犠牲を減らす基本は、ハンドルを握る人のモラルと注意力にある。法改正を機に、一人一人が安全運転への自覚を新たにすべきだ。
交通人身事故を起こした人には、普通は鉄道事故や労働災害、医療事故の場合と同様に、刑法の業務上過失致死傷罪が適用されてきた。最高懲役は5年だった。今後は自動車運転過失致死傷罪に問われ、最高懲役も7年と重くなる。
2001年には、刑法に危険運転致死傷罪が設けられた。これに続く交通事故に対する厳罰化だ。
故意に危険な運転をした者に対する危険運転致死傷罪と違い、前方不注意などが原因で、年間約90万件も起きている人身事故のほとんどに適用される。
改正のきっかけは、埼玉県川口市で昨年9月、保育園児の列に車が突っ込み、園児4人が死亡、17人が重軽傷を負った事故だ。カセットプレーヤーのテープを替えようとしての脇見運転だった。
これほど痛ましい事故だったにもかかわらず、地裁判決は業務上過失致死傷罪の上限の懲役5年にとどまった。
遺族らは最高で懲役20年の危険運転致死傷罪の適用を求めた。しかし、この罪の適用要件は、正常運転が困難なほど飲酒していたとか殊更に赤信号を無視したなど、極めて限定されている。その壁を超えることができなかった。
裁判長も「危険性や悪質性は際立っているが、法定刑の上限に張り付くほかはない」として、業務上過失致死傷罪の刑が軽すぎることに言及していた。
遺族などには、懲役を2年引き上げる程度の改正では不十分だとする意見がある。危険運転ではなく不注意運転が原因だとしても、失ったものの大きさを考えれば当然の思いでもあるだろう。
政府は今国会に道路交通法の改正案も提出している。成立すれば酒酔い運転の懲役は最高3年から5年に、酒気帯び運転も1年から3年になる。改正刑法と併せ、酒気帯び人身事故では懲役が最高6年から10年へ格段に厳しくなる。
道交法は2002年改正に続く厳罰化だ。今度こそ飲酒運転による悲劇を絶つ契機としなければならない。(読売・社説)