数年前、「心中天網島」を映画化した篠田正浩監督が、「梟の城」をリメークした。今度の「梟の城」は、{CG}を使う。リメークといっても、同じ監督ではない。前の「梟の城」は時代劇全盛からややかげりが見えた時の東映作品で、辰巳柳太郎さんの弟子の大友柳太朗さん主演のカラーで、ラストの見せ場は、フクロウの声で伊賀の重蔵?が起き上がり、竹薮の中、敵の刺客役戸上城太郎?さんとリアルな殺陣を魅せるのである。少年は、息詰まる死闘に圧倒された。原作は司馬遼太郎の直木賞受賞作である。
凄い形相のクローズアップが、なんであんなキンキラキンの豪華な衣装で果し合いに臨むのか、解けなかったが、戦国武士が出陣で派手な甲冑と同じ、と後年納得した。
さて、「御存知 快傑黒頭巾」、「丹下左膳」での大友さんが、「梟の城」の伊賀者はよかった。「丹下左膳」で深夜の江戸市街、十字路を、片目片腕で全力疾走して曲がるその離れ業。映画スターの貫禄十分であった。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
緒形拳さん本人が主演の、それもNHK大河ドラマ。その敵役の最期の場面を、兄弟子大友が演じる、を観て、後年、よもや、「MISIMA」のオファーが来て、兄弟子が演じた、それを、とうとう己も演じるのかも知れない、と脚本を開けた時の、緒形拳さんの顔を、想ってみたりもします。
しかし、「MISIMA」にそんなシーンがあったか、未見の者には、わかりません。だが、それを演じたのであれば、やはり、それは、新国劇出身といういささかだかの矜持があればこそ、でしょう。また、リアリズムですね。
大友さんの「丹下左膳」は障がい者、「梟の城」は忍びの者。これらの殺陣は、リアリズムに入れます。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
もうひとつの{CG}は、「硫黄島」である。あの、大挙上陸に押し寄せる白波切る舟艇の数。
守る日本兵の総司令官栗林忠道を演ずるは、渡辺謙さんである。
監督が2部作にしたのは、渡辺さんと会話し、俳優としての彼に関心を持ったことも要因である。
もう昔話、角川の大作「天と地と」で難病から中途降板した俳優からすれば、その闘病生活とそれで覚えた英会話も無駄にはならなかった、またとないチャンスである。
自分だって、栗林司令官を演じる俳優が何人いるか、想像しない。
でも、渡辺謙さんなら、十分期待に応えてくれるであろう、とおもう。かってNHKTVの大河「時宗」でその父親役を演じたのは、闘病で死線をさまよった彼ならではの鬼気迫る好演であった。
岡本喜八監督「日本のいちばん長い日」で阿南陸相の最期を演じた、三船敏郎が居る。
ただ、ひとつ気になった、TVの予告編で流れたカット。
日本帝国軍人が、向かい来る大量の敵軍に向かって、それを見据えて『いきましょう』なんて、言うかいな。シナリオは誰だ。日本人か。いいんだ、60年記念映画なんだ。とにかく、製作したことが話題であり、日米の多くの俳優に、いい仕事をさせたのだ。
両作品共、未鑑賞である。観なくとも、よい。{戦無々派}が観ればよかろう。
もう自分は、残り時間を意識するようになったから。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
我われにとって、岡本喜八監督の諸作品は、眼で見る戦中史、ではありました。映画で、最も身近に、それを提示してくれた、と。
そこには、戦が描かれ、職業軍人が前面に出て、彼らが歴史を作った、という紛れも無い軍国主義の時代があった、と。映画館で生きた歴史勉強、です。最晩年、アメリカと共作で「イースト ミート ウェスト」を撮られましたよね。アメリカ人も彼の作品群を評価している証拠ですよね。
思想的に、本人もかなり痛めつけられたらしい、そういう俳優が、その役を演じたのなら、ミスキャストな訳ない、暗くむしろ力演。いや、軍人らしくない人に演じさせたが故に、やはり。
惚れぼれとする怪演、という表現、いいですね !
テレビでさんざん言ってて、それを実行した、天本英世という俳優も、スペインと共に記憶されるでしょう。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
寺田農さんは、今年2010年4月号「正論」、特別企画で、新潟県中越沖地震から二年半、被災した電力会社の原子力発電所長と、対談が掲載されてます。この話が来たのも、「肉弾」の名演からかなぁ。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
この二十歳の若者が、後年、神戸行きを薦めた父と母をも失い、特攻もどきが終戦、で帰国、職探しで応募して、時の面接人に、補欠で採用され、それで、そのまた後年。「日本のいちばん長い日」で、終戦日の陸相を、その最期を演じようとは。
ここでも再三取り上げた稲垣監督「風林火山」。そこでは、三船さんが演じる山本勘助は、両眼両足自由で、闘牛のような黒い角兜。歴史上の人物山本勘助は、片眼片足不自由。でも、迫真でした。
それで、歴史小説、歴史劇映画が好きな者としては、やはり、終戦時の陸相の最期、このシーンの役作りの苦心惨憺。この時の三船さんの心情に到る、のです。
同時代、何と評したら、いいのでしょうか。同じ時代を生きたからこそ、の想いでしょうに。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
三船敏郎という俳優が、良き先輩、優れた監督らによって、資質を開花し、この国の神話の時代の主役から、自身が命拾した終戦の阿南陸相割腹まで、数々を演じてきた。
当に、「ミフネを観れば、日本史がわかる」、具現の象徴、とも言えますね。
飛行士は、資質が俳優向きなのかな。西村晃さんは、召集前から、演劇専攻でしたが。今風のイケメン鶴田浩二さんは、彼らを見送った整備士でしたね。歌手でも名を残した。
彼ら先輩諸氏から、後輩も含めて、後世の者たちが感得するは、奇跡、もしくはそれ等に類似するものなんでしょうね。
戦時下の恐怖、その状況の、生命に対する尊厳は、どういう形であれ、やはり、誰かから、受け取るのでしょうね。