1980年にスペインで消息を絶った石岡亨さん(当時22歳)と松木薫さん(同26歳)の拉致事件を巡り、2人とみられる男性が北朝鮮で、「良い所だと聞いていたが、大したことはなかった」と不満を漏らすのを、同じく拉致被害者の田口八重子さんが聞いていたことがわかった。
警視庁公安部は、よど号グループのメンバーの妻である森順子(よりこ)(54)と、若林佐喜子(52)の両容疑者が、石岡さんらをだまして北朝鮮に拉致したと断定。13日午後、結婚目的誘拐容疑で両容疑者の逮捕状を取得したのを受け、国際手配の手続きに入った。
石岡さんと松木さんを巡っては、良く似た2人の男性が80年7月ごろからの約1年間、田口さんが暮らす平壌郊外の招待所の別棟で生活していたことが、拉致被害者の地村富貴恵さん(52)の証言で判明している。その後、田口さんと暮らすようになった地村さんは、この2人が「北朝鮮は良いところと聞いて来たが、大したことなかった」「『別荘がある』と誘われた」などと話すのを聞いたなどと、田口さんから打ち明けられていた。
一方、石岡さんと松木さんがスペインに滞在していた1980年4〜5月にかけ、森、若林両容疑者らと現地で知り合った日本人姉妹が公安部の調べに、森容疑者について「松木さんに好意があるような態度だった」「(私たちには)『フィアンセがいる』と話していたのでおかしいと思った」と説明しているという。
公安部は、グループのリーダーで森容疑者の夫の田宮高麿容疑者(95年11月死亡)についても、石岡さんと松木さんをだまして北朝鮮に連れてくるよう指示していた疑いが強いとして、容疑者死亡のまま同容疑で書類送検する方針。(読売)