永住帰国した中国残留孤児が1人あたり3300万円の損害賠償を国に求めた「中国残留孤児集団訴訟」のうち、北海道在住の85人と、高知県内の56人が起こした訴訟の判決が15日、札幌地裁(笠井勝彦裁判長)と高知地裁(新谷晋司裁判長)であり、いずれも原告側の請求を棄却した。
原告側は控訴する方針。
全国15地裁で約2200人の孤児が起こした集団訴訟のうち、1審判決で原告側が勝訴したのは、昨年12月の神戸地裁判決のみ。これまで大阪、東京、徳島、名古屋、広島の5地裁で原告側が敗訴しており、今回の2件を含めると、7地裁が国の賠償責任を認めない判断を示すことになった。
訴訟では、〈1〉孤児の早期帰国を実現させる義務が国にあったか〈2〉帰国後の自立支援策は十分だったか――などが主な争点だった。
高知地裁の新谷裁判長は、孤児らを「潜在的な軍人」と位置づけ、満州(現中国東北部)から日本に帰国させる召還の義務や、帰国にあたっての国籍調査の義務が国にあったと指摘。このうえで、これらの義務を怠ったのは「違法」と述べ、この点で国の違法行為を初めて認めた。
しかし、損害賠償請求権については「消滅時効が完成している」として、原告の訴えを棄却した。
札幌地裁の笠井裁判長は「国に孤児たちを早期帰国させる法的義務はなく、自立を支援すべき義務違反もなかった」と述べ、原告の主張を退けた。
札幌訴訟の原告は、57〜76歳の計85人(うち1人死亡)。高知訴訟の原告は、61〜89歳の計56人(同)。請求額は、札幌訴訟が計28億500万円、高知訴訟が計18億4800万円。
安倍首相は1月末に柳沢厚生労働相に「新たな支援策」を指示。今月12日に、厚労省の有識者会議が提言した「基礎年金の満額支給と特別給付金」という案を基に、夏までに支援制度をまとめることになっている。しかし、孤児側はその内容に満足していない。
厚労省中国孤児等対策室・北原久文室長のコメント「札幌地裁では、国側の主張が認められたと考えている。高知地裁の判決内容については、一部国側の主張と異なる点もあると見受けられ、詳細を確認している」(読売)