社会保険庁に年金保険料の納付記録がなく、領収書などの物的証拠がない場合に、年金支給の可否を判断する「年金記録確認中央第三者委員会」(梶谷剛委員長)は13日、15件の事例で保険料の納付があったと認め、記録訂正の必要があるとする初のあっせん案をまとめた。
記録訂正の申し立てを行った本人に通知し、17日に菅総務相が村瀬清司社会保険庁長官にあっせん書を手渡す。社保庁はあっせんを受けて記録を訂正し、本来、支払われるべき年金支給額に変更する。
今回、記録訂正が認められたのは国民年金で保険料納付の有無にかかわるもの12件と、過去の未納分を一括して納付できる特例納付保険料の有無に関するもの2件、厚生年金の加入期間の相違に関するもの1件。
具体的には〈1〉国民年金の保険料を夫婦で共に納めていたのに一方の納付記録が消失している〈2〉保険料が未納とされた4か月を除き、40年間にわたりすべて納付済みとなっている〈3〉保険料を支払ったとする家計簿がある――などの事例で記録訂正が認められた。
年金記録の訂正に関しては、全国50か所に設置された年金記録確認地方第三者委員会が17日から申し立ての受け付けを開始し、個別の事例について年金支給を認めるかどうかの審査を行う。今回、中央委員会があっせん案を策定したのは、現実にどのようなケースで年金記録の訂正を認めるかの「先例」を地方委員会に示すためだ。
中央委員会は昨年8月からの社保庁の年金特別相談などで、領収書など保険料支払いの直接の証拠はないが、本人が保険料を支払ったと主張している283件のうち資料の整っている36件を先行して審査した。今回記録訂正を認めた15件以外の21件は審査継続中で、このうち11件は、本人が保険料を納付したことが確認されており、事業主による着服などの可能性があるという。(読売)
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総務省は12日付で、年金保険料を納付したにもかかわらず社会保険庁に記録がなく領収書等の証拠がないケースで、年金支給の可否を判断する「年金記録確認地方第三者委員会」の委員308人を任命した。任期は2年間。
地方委員会は各都道府県に1か所(北海道は4か所)の計50か所に設置され、弁護士や税理士、社会保険労務士らで構成されている。
ほとんどの地方委員会は12、13日のいずれかに初会合を開く。申し立ては、17日から受け付ける。(読売)
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年金記録漏れ問題に揺れる社会保険庁で、職員の事務処理に絡んだ事件・事故やミスが、昨年度だけで、1000件を上回る見通しであることがわかった。
2005年度は約400件で、一気に2・5倍以上に膨れ上がることになる。社保庁では今年度から、こうした不祥事をまとめて公表することにしているが、一部の社会保険事務局の報告に問題があったとして、現在、他の報告内容についても確認作業を進めており、公表のめどは立っていない。
社保庁の内部資料によると、05年度の不祥事は、事件・事故が53件、事務処理ミスは354件の計407件だった。事件・事故の中には、厚生年金や国民年金の保険料着服や詐取が3件、年金手帳や国民年金納付状況カードなどの紛失が37件あったほか、年金相談センター長らが、年金加入情報を興味本位でのぞき見した事例も含まれている。
社保庁によると、06年度のこうした不祥事は、既に1000件を超すことが確実となっているという。
この中には、昨年12月から今年1月にかけて、宮崎県内の都城、高鍋の両社会保険事務所で発覚した、年金選択に関する3件の処理ミスもある。夫を亡くした高齢の女性らが、既に受給していた年金より、支払い額の多い遺族厚生年金の受給を請求したが、年金を選択する申出書を提出させなかったため、従来の年金支給が継続され、計約37万円の差額の支払いを受けられなかった。
この処理ミスを巡っては、上部組織の宮崎社会保険事務局が今年2月、社保庁に報告し、同事務局のホームページ(HP)で公表を約束。しかしその後、女性1人が公表を拒んだとして、同事務局は公表していなかった。これに気づいた社保庁の担当者が指導し、6月中旬にHPで公表された。
この問題をきっかけに社保庁では、06年度の不祥事報告の内容を洗い直しているというが、「いつ公表できるかわからない」(サービス推進課)という。
社保庁では、05年度の不祥事のうち、金銭登録機や切手(2万6610円分)の紛失など、財産紛失に関する3件について、会計検査院への報告も怠っていた。(読売)