刻一刻と、被害の大きさ、深刻さが伝わってくる。
新潟県沖の日本海を震源とする「新潟県中越沖地震」により長岡市と柏崎市、刈羽村、長野県飯綱町が、震度6強の揺れに襲われた。立っていられない、というほどの激しい揺れだ。
各地で道路や橋が壊れ、土砂崩れが起きた。住宅も多数が倒壊している。隆起して曲がった道路、屋根が落ち、押しつぶされた家屋が地震の猛威を物語る。水道や電気など、ライフラインの損傷も大きい。死者、負傷者は時を追って増えている。強い余震も続く。
政府は官邸に対策室を設け、安倍首相も遊説先の長崎市から戻った。新潟、長野両県、関係市町村と協力して現状把握と被災者の救出、救援に全力を挙げ、余震による被害拡大を防ぐ必要がある。
倒壊住宅や土砂崩れの現場に、もう被災者はいないか。孤立した集落や世帯は見逃されていないか。壊れそうな住宅で救いの手を待つお年寄りはいないか。避難した被災者への支援は十分か。
2004年10月の中越地震から、まだ3年も過ぎていない。長岡市などでは200世帯以上が、仮設住宅で再起を目指して苦しい生活を続けている。
その震源から約40キロしか離れていない海底で、また断層が動いた。地震は日本列島のどこでも起き得る。近接地域で続発することもある。油断できない。
災害時に避難場所にもなる小中学校数十校の校舎や、刈羽村役場などが損傷した。こうした公的施設は、防災の拠点として、耐震強化の必要性が指摘されてきた。だが、対策は遅れている。他地域でも耐震性の検査と対策を急ぎたい。
東京電力の柏崎刈羽原子力発電所では火災が発生した。原子炉は揺れを感知して自動停止した。火が出たのは原子炉建屋外の変圧器で、直ちに原子炉に影響するものではない。
ただ、消火に約2時間かかった。黒煙を上げて燃える変圧器に、不安を抱いた人もいるだろう。原発本体の安全性は万全でも、もっと速やかな対応はできなかったか、検討すべきだ。
中越地震で初の脱線事故が起きた新幹線は、今回、安全対策が期待通り機能して緊急停止し、無事だった。
JR東日本によると、上越新幹線では沿線などに設けた地震計が初期の地震動を感知し、送電が止まった。在来線では脱線が起きたが、新幹線には大きな被害は見つかっていない。
中越地震の後、「早期地震検知システム」を改良し、高度化した。それが生きた。備えが大切、ということだろう。(読売・社説)
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政府は16日に発生した新潟県中越沖地震について、同日、激甚災害指定の検討に入った。
溝手防災相を団長とする政府調査団や地元自治体の被害調査結果などをもとに、早急に被害額や復旧費を確定させ、指定基準に適合するかどうか検討し、最終判断する。
安倍首相も同日午後、陸上自衛隊ヘリコプターで現地入りし、新潟県柏崎市内の被災現場や柏崎刈羽原子力発電所などを視察した。
激甚災害制度は激甚災害法に基づき、災害復旧に要する費用が一定の基準を超える場合、政府の指定により、復旧事業への国庫補助率の引き上げなどが実施される。
政府は、今年3月25日に発生した能登半島地震については、4月20日に激甚災害に指定し、道路や農林水産業施設の復旧費などの国庫補助率を引き上げた。(読売)