防災の日の1日、37都道府県で防災訓練が行われ、約62万7000人(内閣府調べ)が参加して大災害に備えて汗を流した。
今年は能登半島地震や新潟県中越沖地震と大規模な震災が続いている。政府の総合防災訓練は3年ぶりに東海地震を想定して行われ、予知を前提として、首相官邸と関係機関が連携を確認し合った。内閣府によると、5日までの防災週間中、全国で186万8000人が訓練に取り組む予定。
国は、東海地震については「予知が可能」としており、前兆現象を感知する「ひずみ計」を静岡県から愛知県東部にかけて設置。このデータに異常が見られた場合、危険度に応じて3段階に分けて警戒を呼びかけることになっている。
政府の総合防災訓練は午前6時30分に開始。ひずみ計に前兆現象を示すデータが見つかったとして、気象庁が3段階のうち2番目の危険度にあたる「東海地震注意情報」を発令した。
これを受け、午前7時、関係省庁の局長級からなる緊急参集チームが集まって対応を協議、首相官邸の危機管理センターに官邸対策室を設置した。今年7月の中越沖地震では、東京電力柏崎刈羽原子力発電所が被災したため、経済産業省原子力安全・保安院院長も初めて招集された。
さらに、観測データの異常が顕著になったとして、気象庁長官が安倍首相に「東海地震予知情報」を報告。同8時30分から緊急記者会見を開き、安倍首相は「東海地方を中心として広範囲で甚大な被害が見込まれる」として、警戒宣言を発令した。首相はその後、テレビ画面を通じて石川嘉延・静岡県知事と連絡を取り合った。
国の中央防災会議では2003年3月、東海地震の発生を予知して注意を促すことができれば、死者は約2400人、経済的被害は31兆円に抑えられると想定した。ただ予知できなかった場合には、最悪で死者は約1万人に達し、約190万人が避難生活を余儀なくされると算出している。
訓練では午前10時、静岡県西部を震源として、マグニチュード8・0の地震が発生。首相は静岡県伊豆市での防災訓練に向かった。(読売)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
政府は2008年度から、自治体が策定した地域防災計画の充実度を点検する事業に乗り出す。
災害時の住民の避難や救助などの各計画について、意思決定や訓練の実施状況などの項目ごとに“採点”する。地域防災計画でどの部分に弱点があるかをそれぞれの自治体に知らせて、改善を促し、地域防災力の強化を図るのが狙い。
市町村や都道府県は国の防災基本計画に沿って、地域防災計画を作ることになっている。しかし、中には耐震性に欠ける建物を避難所に指定したり、地域全体が被災する恐れのある水害や火山災害に対して広域避難の記述が不足していたりするケースもある。
このため、政府は08年度、中央防災会議(会長・安倍首相)に有識者らからなる専門調査会を設置。具体的な地域防災計画の点検方法などを決め、10年度にも点検を開始することにした。
05年のハリケーン「カトリーナ」で死者1600人を超す被害が生じた米国では、住民の避難が事前の計画通りにいかなかったとして、運輸省と国土安全保障省が翌06年に、被災などした5州の避難計画を評価し、問題点を指摘した。日本でも災害時に同様の問題が起きないように、政府は、各自治体の地域防災計画に弱点がないかどうか点検することにした。(読売)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大地震が発生するとわかったら、まず何をすべきか。交通網がマヒしたら、大量の被災者をどうやって自宅に帰すか。
「防災の日」の1日、様々な想定で行われた全国各地の防災訓練。「逃げるのが精いっぱいだった」。震度6強のつめ跡が今も残る新潟県中越沖地震の被災者たちが振り返るその時。被害を少しでも減らそうと参加者は真剣な表情で取り組んだ。
◆水上輸送
隣県から通勤する「昼間都民」を多く抱える東京都では、地震で道路や線路が寸断された場合、被災者の帰宅ルートは水路が頼みの綱。東京では、在日米軍や海上自衛隊の艦艇で帰宅困難者の訓練が行われた。
江戸川区の葛西海浜公園では午前7時20分、陸へ乗り上げることができる揚陸艇が到着し、海兵隊員が帰宅困難者に見立てた都職員ら66人を誘導。揚陸艇は東京湾の沖合に停泊していた揚陸艦「トーテュガ」へ。そのまま神奈川県の米軍横須賀基地に向かった。
また、江東区豊洲の船着き場からは、神奈川、千葉両県の県民約360人が、水上バスや海自の護衛艦などを乗り継いで横浜港や千葉港を目指した。横浜市の会社員山根由成さん(40)は「地震の混乱時にきちんと自宅の方向に向かう船に乗れるのか心配だ」と話していた。
◆東海地震
政府主催訓練のメーン会場となった静岡県伊豆市。東海地震を想定し、地元消防が川に転落した車から負傷者を救出する訓練や、同市の修善寺温泉では、地元の旅館組合が宿泊客の避難訓練などを実施した。
午前8時半に訓練開始のサイレンが鳴ると、地元住民に交じって、老舗旅館の宿泊客らも、避難場所に指定された近くの修善寺総合会館に集まった。知名度の高い温泉地や観光地を多く抱える同県にとって、宿泊客や観光客を適切に誘導できるかどうかが課題だ。
◆被災地
新潟県中越沖地震で被災した柏崎市。100戸の仮設住宅が並ぶ佐藤池(さとうがいけ)新田では、被災者がようやく生活のリズムを取り戻しつつある。
入居する50歳代の女性は、「地震から1週間は唯一残った物置小屋で生活をしたが、周りの人たちが明かりやラジオも貸してくれた。行政のできることには限界があるので、地域の人たちにいかに助けてもらえるかが大切だ」と実感を込めて語った。
柏崎市はこの日、市役所内に復興計画の策定などにあたる中越沖地震復興本部と、生活再建の申請受け付けなどを担当する復興支援室を設置した。(読売)