奈良県田原本町の医師(48)方で起きた放火殺人事件を巡り、長男(17)の供述調書などを引用した単行本「僕はパパを殺すことに決めた」が出版された秘密漏えい事件で、奈良地検は2日、長男を精神鑑定した医師崎浜盛三容疑者(49)(京都市左京区)を刑法の秘密漏示罪で奈良地裁に起訴した。
本の著者でフリージャーナリストの草薙厚子さん(43)については、嫌疑不十分で不起訴処分とした。
情報源の逮捕という異例の経緯をたどった事件の捜査は終結、崎浜容疑者は保証金300万円で保釈された。
起訴状によると、崎浜容疑者は昨年8月に奈良家裁から鑑定医に選任され、同10月5日〜15日ごろ、自宅などで計3回、鑑定資料として受け取った長男の供述調書の写しなどを草薙さんに見せた。崎浜容疑者は動機について、「広汎性(こうはんせい)発達障害への誤った認識を解きたかった」などと供述をしているという。
一方、草薙さんについて、奈良地検は崎浜容疑者と共謀して本を出版した「身分なき共犯」に当たる疑いがあるとして捜査を進めたが、崎浜容疑者が単行本の内容を事前に知らされておらず、共犯関係の立証は困難と判断した。
草薙さんの取材方法については、外務省秘密漏えい事件の最高裁決定(1978年)が「違法性があるのは社会通念上是認できない場合」などとしており、2人の間に金銭授受などが確認できないため、「正当な取材活動の範囲内」にあたると判断したとみられる。
崎浜容疑者は保釈後、報道陣に対し、「少年のためと思ってしたことが、結果的にこういうことになり、残念で複雑な気持ちです」と述べた。
一方、草薙さんは「鑑定医の方はもとより、ご迷惑をおかけした方々には申し訳ない気持ちでいっぱいだが、公権力の介入は許せない」、講談社も「いかなる形であれ、出版・報道に対する公権力の介入は許されない。鑑定医の方に深くおわび申し上げるとともに、社会的責任を果たすべく意義のある出版活動を続けていく」との談話を出した。(読売)
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こんな書名がまかり通ることに、危機感を感じたのだが、それも著者が女性ということで。
鑑定医という職務の重さを知りました。
父権への脅威、と捉えたのですが。